こんにちは。パーソナルトレーナーの西田です。
先日ツイッターを見ていると、このようなツイートを見つけました。
人工的なタンパク質(笑)
医者がプロテインの実際を知らずに書くと、こういう的外れの文章になる。
なお厚生労働省は正常人が高タンパクにしても腎臓に悪影響は与えないとしている。医者がプロテインをオススメしない怖い理由 https://t.co/nufmeiEi08
— Yoshinori Yamamoto (@claymoreberserk) 2017年11月7日
本来の記事はこちらでしょうか?
ネット上のある記事へのツイートですね。
この記事は、あるお医者さんが書かれている本から抜粋されています。
Twitterへのコメントや、ヤフーニュースでのコメントを見ると、いろいろと突っ込みどころがあることがわかると思います。
この記事を読んでみて、僕が突っ込みたいところをまとめていきます。
「人工的なたんぱく質」は良くないのか?
まず、こちらの文章から。
このように腎臓は非常に重要な臓器なのですが、人工的に大量のタンパク質を摂取することは、その働きを腎臓に強要し疲弊させ、重大な被害を生みかねません。
また、タンパク質の大量摂取は骨に悪い影響を与えるという論文もあります。こうした人工物で健康体をつくろうというのは大きな間違いなのです。
続いてはこちらですね。
では、人工的なタンパク質とはなんでしょう。代表的な例が、パウダータイプなどのプロテインやアミノ酸です。スポーツクラブに行くと、摂取している人をよく見かけます。とくに男性に多いですね。
どうせ運動をするなら、筋肉がつくプロテインや疲労を取り除くアミノ酸の力を借りたほうが効率的だと考えるのでしょう。
しかし、私はいますぐやめたほうがいいと思います。こうした人工的な商品には、自然な食品とは比べものにならないほど大量のタンパク質が含まれています。もともと腎臓が悪い患者さんは、普段の食生活でも肉や魚、豆腐などのタンパク質を厳しく制限します。ただし、健康な人が食品からとっている分には過剰摂取にはなりません。
問題なのは、プロテインやアミノ酸など、人工的につくられたものです。こうしたものを日常的に摂取していれば、腎臓を壊す可能性が高いのです。
この記事を読んで、本を書かれているお医者さんが言われていることをまとめると、こんな感じですかね?
1、プロテインやアミノ酸などのサプリメントは、「人工的なたんぱく質」なので体に良くない。
2、「人工的なたんぱく質」を「過剰摂取」することは体に良くない。
3、健康的な人が食品からとっている分には過剰摂取にならない。
4、なぜ「人工的なたんぱく質」が良くないというと、自然な食品とは比べものにならないような大量のたんぱく質が含まれているから。
要約すると、
プロテインなどの「人工的なたんぱく質」は、自然な食品とは比べものにならないたんぱく質が含まれているから、たんぱく質の過剰摂取につながってしまう。
だから「人工的なたんぱく質」は良くない。
健康的な人が食品からとっている分には過剰摂取にならない。
こんな感じだと思います。
まず、プロテインは「人工的なたんぱく質」ではない
ほとんどのプロテインは、「ホエイプロテイン」か「ソイプロテイン」です。
「ホエイ」というのは「乳清」というもので、簡単に言えばヨーグルトの上澄み液です。ヨーグルトに透明の液体がありますよね?あれが「ホエイ」です。
そして「ソイ」というのは「大豆」です。
ほとんどのプロテインは「牛乳」か「大豆」で出来ているわけです。そこから「人工的」にたんぱく質を抽出して、みなさんお馴染みの「プロテイン」になるわけです。
ですので、たんぱく質自体が「人工的」ということではなく、牛乳や大豆などの自然のたんぱく質を、「人工的」に抽出しているだけにすぎません。
なので、プロテインのたんぱく質は人工的なたんぱく質ではなく、自然の食材由来のたんぱく質になります。
なので細かく言うと、「人工的なたんぱく質」ではなく、「自然の食材から人工的に抽出したたんぱく質」というのが正確です。
このような記事の書き方だと、プロテイン自体が悪いという風にとらえられやすいでしょう。
ですので問題点としては、プロテインから摂取したたんぱく質自体が人工的で悪いものということではなく、たんぱく質自体の過剰摂取が肝臓や腎臓に負担がかかるということですね。
お医者さんがこのような誤解を招く表現をするのはダメだと思います。
結局問題点は、過剰摂取かどうか?
先ほどの記事を読むと、「プロテイン自体が悪だ!」という解釈をしやすいですが、プロテイン自体は悪くありません。たんぱく質を過剰摂取すること自体が問題だということですね。
ですので、プロテインを飲んでいても過剰摂取でなければ問題ありません。
逆に言えば、自然の食材からたんぱく質を取っていたとしても、過剰摂取すれば問題があるということですね。
しかし、先ほどの記事には、
健康な人が食品からとっている分には過剰摂取にはなりません。
と書いてあります。
ん??言っていることに矛盾がありますよね?
このお医者さんは、プロテインが悪い理由として、「たんぱく質を過剰摂取してしまうから」という理由を挙げられていました。たんぱく質を過剰摂取してしまうと、肝臓や腎臓、骨に悪い影響を与えるということでしたね。
でもなぜか、「健康な人が食品からとっている分には過剰摂取にならない」と言われています。
自然の食品からたんぱく質をとっていたとしても、食べ過ぎれば過剰摂取になってしまうことはあります。「自然の食品だから大丈夫!」と思っているのでしょうか?
言っていることが矛盾してますね。お医者さんって頭がいいと思うのですが、自分の論理が矛盾していることに気づかないのでしょうか?
プロテインから摂るたんぱく質の過剰摂取はダメで、自然の食品から摂る過剰摂取は良い!という理論は矛盾しています。
人工的なものが「悪」で、自然のものが「善」か?
この記事の書き方だと、人工的なものが「悪」で、自然のものが「善」だ!というふうに捉えてしまう方が多いと思います。
そしておそらくこのお医者さんは、人工的なものが悪くて自然のものが良いという考えがあると思います。
このような、人工的なものが悪くて自然のものがいいという極端な考え方を、「フードファディズム」と言います。
フードファディズムとは?特定の食品を摂取すると健康になる、特定の食品を口にすると病気になる、ある種の食品は体に悪いなど、マスコミや書籍・雑誌の情報を信じて、バランスを欠いた偏執的で異常な食行動をとること。
アメリカでは以前からあった概念で、日本には1998年ごろ、高橋久仁子によって紹介された。マスメディアが科学的な根拠を把握せずに、扇情的に健康情報を流した事件など、社会問題にもなっている。“万病に効く食品、やせる食品”、“ある成分は難病に効く”、“天然や植物性は良いが人工や動物性は悪い”などの誤った情報や思い込みが典型的な例。食と健康に対するしっかりとした知識を身に着けることが解決策である。
この思い込みを持っている方って、けっこう多いと思います。
自然のものや植物性のものが良くて、人工のものや動物性のものが悪いという極端な考え方ですね。
自然のものや植物性のものでも、摂り過ぎれば問題がありますし、人工的なものや動物性のものでも、摂りすぎなければ問題ありません。
例えば、「玄米」は自然の食品で健康やダイエットにいいイメージがありますが、食べ過ぎれば太りますし健康に良くありません。
例えば「白砂糖」は健康やダイエットに悪いイメージがありますが、摂りすぎなければ問題ありません。
自然の食品や植物性のものでも、「毒」があるものはたくさんありますし、実際に亡くなっている方もたくさんいます。
一般の方がこのような思い込みがあってもしょうがないと思いますが、お医者さんで食事に関する本まで出版されているのに、このような根拠のない極端な考え方を広めているのはけっこうダメだと思います。
この辺りの情報は、今後研究が進めばいろいろなことが発見されたり、今まで悪いと言われていたものが逆に健康に良かったという発見もあります。
パーソナルトレーナーとして、インプットし続けていきたいですね。
たんぱく質の過剰摂取に注意したほうがいい方は、ごくごく一部である
そして次の問題点ですが、たんぱく質の過剰摂取についてです。
確かにたんぱく質の過剰摂取を長期間続けると、肝臓や腎臓に負担がかかります。しかし、たんぱく質の過剰摂取に注意したほうがいい方というのは、ごくごく一部の方に限られます。
普通の食事をしていてたんぱく質を摂りすぎてしまうという方は、ほとんどいないと思います。
たんぱく質の過剰摂取に気をつけたほうがいい方というのは、筋トレが大好きでたんぱく質を大量に摂ることが筋肉の成長や筋肉の回復につながることを知っていて、食事やプロテインなどで意図的に多くのたんぱく質をとろうとしている方です。
こんな人って、ごくごく一部です。
多くの方は、運動不足でたんぱく質を多くとろうと意識していないですし、食事に気を使ってないと、糖質と脂質の方が過剰摂取になりやすいです。
だから肥満になってしまったり、生活習慣病になってしまったりするのです。
筋肉や筋トレが大好きで、意図的に多くのたんぱく質を摂取しようとしている方は、たんぱく質の過剰摂取に気をつけたほうがいいです。
しかし、それ以外のほとんどの方は、たんぱく質ではなく糖質と脂質の過剰摂取に気をつけましょう。
たんぱく質の過剰摂取より、糖質と脂質の過剰摂取に気をつけよう
糖質と脂質を多く取ってしまうと、肥満になったり健康に良くないのはほとんどの方が知っていることだと思います。
普通に食事をしていたり、美味しいものばかり食べていると、どうしても糖質と脂質が多くなってしまい、たんぱく質が不足してしまいます。
このブログを読んでいる方は、体型や健康で何かしら問題があるという方がほとんどだと思います。そのような方は、たんぱく質の過剰摂取よりも、糖質や脂質、アルコールの摂りすぎで、カロリーを摂り過ぎていないか?ということをまずは気にするようにしましょう。
そして、体型や健康のために、運動や筋トレをしようと思っているのなら、たんぱく質は多く摂るようにしたほうがいいです。
筋トレや運動をすると、筋肉が損傷します。たんぱく質というのは筋肉の材料になりますし、筋肉を修復してくれます。筋トレや運動をする人は、何もしない人よりもたんぱく質を多く取ったほうがいいですね。
他にも、ダイエットの時には筋肉量が減りやすくなってしまいます。なので、筋肉を減らさないために筋肉の材料となるたんぱく質を多く摂ったほうがいいんです。
こんな時に自然な食材だけからたんぱく質を摂取しようとすると、食材を大量に食べなければいけません。そうなるとたんぱく質と一緒に糖質と脂質も多く取りやすくなります。その結果、カロリーを多く摂り過ぎてしまい、肥満になりやすく健康的ではないということになります。
このような理由から、運動や筋トレをしている方は、プロテインをとったほうが糖質と脂質が少なく、たんぱく質を多く摂ることができるようになります。
サプリメントの優先順位は、一番下
ここまででは、どちらかというとプロテインを肯定してきました。
しかし、僕が考える栄養の優先順位では、サプリメントの優先順位は一番下になります。
なので、基本的には食事からバランスのとれた栄養素を摂ることができれば最高です。しかし、食事だけで理想的な栄養バランスにしようとすると、面倒だったり大変だったりするので、出来なかったり続かないことが多いのです。
なので、補助的にプロテインなどのサプリメントを利用することによって、より楽に簡単に理想的な栄養バランスを続けることができます。
それによって体型が改善されたり、健康になったりするのです。
プロテインなどのサプリメントは、「悪」ではありません。しかし、優先度でいうと食事から摂る方が重要なので、食事から摂りきれない分をサプリメントで補うようにしましょう。
中・高齢者もたんぱく質を摂るように意識したほうがいい
以下は厚生労働省のホームページに掲載されているPDFからの引用です。
骨格筋量、筋力、身体機能は栄養素としてはたんぱく質摂取量に強 い関連があるため、たんぱく質の重要性が注目されている。実際、高齢者では健康維持のために必 要な十分なたんぱく質摂取ができていないとの事実も報告されている
地域在住の 70 歳代の高齢者を 3 年間観察したところ、3 年間の除脂肪体重の減少が、登録時の 総エネルギー摂取量当たりのたんぱく質摂取量に依存し、五分位で最もエネルギー摂取量当たりの たんぱく質摂取量が多い群(平均 91.0 g/日、1.2 g/kg 体重/日)では、最も低い群(平均 56.0 g/日、 0.8 g/kg 体重/日)に比較し、交絡因子で調整後においても除脂肪体重の減少が 40% 抑制されてい た 39)。また、最近のコホート調査でも、たんぱく質摂取量が少ないことは 3 年後の筋力の低下と 関連し 40)、さらに高齢女性の 3 年間の観察で、たんぱく質摂取量が少ないとフレイルティの出現 のリスクが増加することが確認されている 41)。
身体機能の低下した高齢男女 95 人を対象に、 11 種のアミノ酸を混合したサプリメント 12 g を 3 か月間補給し、歩行能力や筋力を比較した研究 において、アミノ酸補給群では歩行能力が改善し、筋力の増強を認め、高齢者へのアミノ酸の経口 投与は、歩行能力、筋力向上に効果がある可能性が示された 55)。
このように、骨格筋量、筋力、身体機能とたんぱく質の摂取量は、関係しています。
一般的な中高齢者の方はたんぱく質が不足しがちなので、意識して摂取するようにしましょう。
ちなみに厚生労働省が推奨しているたんぱく質の摂取量は、
男性(18歳以上)・・・1日60g
女性(18歳以上)・・・1日50g
になります。
参考にされてください。
良いか悪いかも大事だが、「量」も大事
健康に良いもの悪いもの、ダイエットに良いもの悪いものなどはあります。しかし、良いものであれば大量にとっていい訳ではありません。
悪いものでも、量が少なければ問題は少ないです。
自然のものや植物性のものが良くて、人工のものや動物性のものが悪いといった極端な考え方に陥らないようにすることが重要です。
先程言った、「フードファディズム」というやつですね。健康に良いとされているものでも、食べ過ぎれば「毒」になることだってあります。
何事もバランスが重要ですね。